左肩で抱えた仲間と優勝の重み…明治神宮野球大会で初出場優勝の札幌大谷・北本遊撃手

何も気にせず、心の底から仲間と喜んだ―。
栄光の瞬間、マウンド付近で歓喜の輪が生まれる。背番号10の北本壮一朗遊撃手(2年)は、神宮で無我夢中に仲間と抱き合った。無念だった。
秋季北海道大会準決勝の駒大苫小牧戦。4点ビハインドの3回1死一、三塁の好機で、北本に打席が回った。だが、結果は二ゴロ併殺打。
なんとか、1点をもぎ取ろうと果敢に一塁へヘッドスライディングも、ベースに左肩を奪われて脱臼した。直後の守備から交代。即座に病院へと搬送されたが、球場に戻るとチームは延長10回の末、7―6で逆転勝ちしていた。
もっとうまく飛び込んでいれば―。自らの不注意での離脱を悔いた。だが、仲間が連れてきてくれた札幌第一との決勝の舞台。
チームのために、今の自分ができることは何か。北本は三塁コーチと伝令役を務めた。決勝戦もまた、3回までに4点ビハインドを背負う展開。
だが、苦しむマウンドの西原健太(2年)にもとへ、北本は痛めた左肩を動かさないよう、右手で押さえながら小走りで何度も向かった。そして逆転した8回裏には、三塁コーチボックスから動く右肩だけをこれでもか、と言わんばかりにグルグルと回し続けた。北海道大会優勝の瞬間―。
北本は真っ先にマウンドへ駆け上がった。一塁側ベンチから全力疾走。痛みなんて忘れていた…はずだった。
だが、歓喜する仲間に思いきり左肩をつかまれるアクシデントが発生。なんとも言えない激痛に、思いきり左肩をつかまれるアクシデントが発生。
そんな声も仲間の雄たけびと、スタンドの歓声にかき消されてしまっていた。本当は思いきり喜びたかった。痛みで控えめな“感動シーン”になってしまったことが、北本にとって一番の心残りだった。
だからこそ、今度は「神宮で―」と心に決めていた。病院では全治3週間の診断。だが、それでは神宮大会に間に合わないと、決死のリハビリ生活を送った。
肩の筋肉をつけるためのインナートレーニング。投手陣と同じランニングメニューをこなした。だが、肩が癒えたところで、すぐに試合に出られるのか―。
約3週間、バットすら振れずに、感覚は完全に失われていた。ベンチにすら入れないことも覚悟していたが、船尾隆広監督(47)は北本の復活を信じて、今大会で「背番号10」を与えた。その心意気に応えない訳にはいかない。
全体練習合流後は毎晩、夜遅くまでバットを振り続けて大会開幕直前に復活してみせた。明治神宮大会での打率は3割6分5厘。決勝では1点ビハインドの7回2死二、三塁から逆転の2点適時中前打を放ち、同校の初優勝を、北海道勢13年ぶりの栄冠を自らのバットでたぐり寄せた。
「リハビリを手伝ってくれたトレーナーの支えがなかったら、ここに立てていなかった。本当に感謝している。まだ信じられないです」。
歓喜の輪の中心には背番号10の姿。やっと、両手で仲間と抱き合うことができた。

 
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