自分より人のため 内海哲也は周囲の心を熱くする男

長く巨人をけん引した内海哲也投手(36)が、人的補償で西武に移籍することが20日、発表された。
ふと携帯電話を見ると、3件の不在着信があった。巨人担当の先輩記者の後、敦賀気比のOB2人からの着信が続いていた。「まさか…」。
嫌な予感がして、すぐにインターネットを開いた。「巨人内海 人的補償で西武へ瞬間的に携帯電話の電話帳の「内海哲也さん(巨人)」を選択し、通話ボタンを押しかけたが指を止め、ホーム画面に戻った。1秒でも早く話をしたいし、思いを伝えたい。
そう思うほど、指が止まった。 ◇◇◇◇    11年間、間近で見てきた内海哲也はとにかく、人を大切にする気づかいの男だった。10年の宮崎合同自主トレ初日、新人だった長野、市川、土本の歓迎会を主催した。
山口鉄、東野らとともに記者も誘われたが、事前にこう言われた。内海 新人の子に「気を使わんでええよ」と言っても、難しいやろうから。記者の立場で「こんな話を聞きたいかな?」てことを、どんどん振ってや。
翌年、沢村が入団した時も同じだった。オフのトレーニングに話が及ぶと「来年、一緒に自主トレやる?」と誘った。「よろしいんですか?」と驚く沢村に「よっしゃ」と快諾。
記者が知る限りでは、史上最速でルーキーの自主トレ先が決まった。つい先日もそうだった。今季限りで現役を引退した山口鉄也氏の引退パーティーをサプライズで開催。
1カ月以上も前からプロジェクトを立ち上げ、参加メンバーとともに場所、プレゼント、企画を綿密に打ち合わせた。「グッさんが、新たな人生に進むんやから。盛大に送り出すで」。
前日には、司会者とともに予行演習した。昔も今も「人のために」を一番に考える人だった。 ◇◇◇◇    通話ボタンを押せないまま、気付けば辺りはもう、真っ暗だった。
「何と言えばいいんだろうか…」。考えれば、考えるほど、時間だけが経過した。「ショックです。
信じられませんと言えば、新天地にかける前向きな気持ちを邪魔するのではないだろうか。「西武はいい球団です。」
2つの思いが、交錯していた。時計の針が午後6時55分をさした時、着信音が鳴った。画面に表示されたのは「内海哲也さん(巨人)」だった。
一言目に「すみません。いろんなことを考えてしまって…。言葉が見つからず、連絡できませんでした」と正直に話した。
内海さんは「そうやったんか。あいつからきぃへんなと思って、こっちからかけてもうたわ」と笑っていた。巨人に入団して以降、原監督が口にする「個人よりも巨人」を愚直に遂行した。
だから「西武では自分のため、家族のために、自分のパフォーマンスに集中して、1勝でも多く、1年でも長くプレーしてほしいです」と伝えた。内海 寂しいけど、自分を必要としてくれたわけやし、内海哲也であることには変わらへんから。今はほんまに「やってやる」っていう気持ちしかないで。
でも、1つだけお願いがあるんやけど…。「何ですか?」と身構える記者に、こう言った。「巨人担当として、自主トレの取材には来てよ。
「オレのことはいいんやけど、ノブ(今村)と大江を取り上げてくれへんか? 将来、ジャイアンツを引っ張っていける投手やと思ってるし、ほんまに頑張ってほしいから」。この状況下でも、自分のことより、後輩を思いやった。人的補償での移籍を通達され、球団事務所で職員にあいさつした時には多くの職員が涙を流し、内海も人目をはばからず泣いた。
情に熱く、周囲の心をも熱くさせる。それが、内海哲也なのである。

 
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