東京五輪へ「創る」1年に 野球の稲葉代表監督

2020年東京五輪の開幕が来年7月に迫った。
【聞き手・細谷拓海】 ――昨年は初めて日本代表監督として1年を過ごし、U―23W杯)でも指揮を執った。◆監督経験を20試合できたというのが非常に大きな経験になったと思う。特にU―23(23歳以下)ワールドカップ(W杯)でも指揮を執った。◆監督経験を20試合できたというのが非常に大きな経験になったと思う。
今まではヘッドコーチに相談しながら決めていた作戦や選手起用の面で、自分の思いがどんどん出てきた。そういう経験を積めたことは良かった。野球は流れが非常に大事だと思っている。
その流れの中で、点を取る作戦や取られないための投手交代が経験できたかなと思う。――去年のテーマは「学ぶ」。◆今までは投手のことは他のコーチに任せていた部分はあったが、投手心理やバッテリーの考え方について建山投手コーチや村田バッテリーコーチに聞けた。
本来なら3月と11月のトップチームの試合だけだったが、U―23で練習試合も含めて11試合できた。ユニホームを着ている時間が非常に長かった分、首脳陣でいろいろな会話ができたというのは大きかったと思う。――代表活動以外にも、プロ野球の2軍戦を視察するなど精力的に動いた。
◆去年が始まった時点で東京五輪まで2年半くらい。その中で、あまり固定観念を持たずに、という部分は意識していた。若手でもいい選手はたくさんいる。
U―23でも若い選手と一緒にやって、今後が非常に楽しみな選手がいた。僕は今、東京五輪で金メダルというのが目標。ただ、ジャパンは五輪後も続いていく。
一人でも多くの選手がジャパンの経験をして、「またジャパンに入りたい」「トップチームを目指したいという意識で成長につなげていってくれたらいいなと思う。――20試合やった中で、特に印象的な試合は? ◆九回に2点差を逆転してサヨナラ勝ちした日米野球の初戦。4番の山川選手(西武)の時に代打で会沢捕手(広島)を送り出したが、ジャパンというチームは時にはそういう采配をしなければいけないのかなと強く感じた。
――大会では米大リーグ選抜を5勝1敗で圧倒した。◆投手に関しては特種球というウイニングショットを皆が持っていて、自分の投球をしてくれた。それが素晴らしい結果に結びついた。
これから人選をするにあたって、いい悩みになるというか、収穫だったなと思う。国際大会では特種球をしっかり扱えるかどうかというのは非常に大事。落ちる球は初対戦ではなかなか打ちづらいので必要だなと感じた。
――「スピード&パワーを掲げる攻撃も、柳田選手(ソフトバンク)らの強打と機動力が絡み合った。◆国際大会は結構、(ボークなどの)ルールがあいまい。僕が現役の時は、走れる選手でもなかなか走れないというケースを多く見てきた。」
今回は相手に強肩のモリーナ捕手(カージナルス)がいた。「ここで走れたら自信になるんじゃないかなと思い、走れる選手には「アウトになってもいいからチャンスがあったらどんどん仕掛けてほしい」と伝えていた。相手チームにも非常にプレッシャーになったと思うし、次に生かしていかなければいけない。
――日米野球前の集合日には秋山選手(西武)と菊池選手(広島)を呼んで「このチームを頼むぞ」と託した。◆今回は若い選手を結構選んだが、経験のある選手が先頭に立ってジャパンというものに対して、めいっぱいやっているということが一番大事だと僕は思っている。言葉ではなく、背中で引っ張るというか。
僕自身もそうしてきた。「秋山さんでもあんな一生懸命やっている」「菊池選手でもあんなにジャパンのためにやっているというところを若い選手に見てほしいと期待していた。今回の日米野球で、一つになれたのは2人がチームを引っ張ってくれた部分が大きいし、初代表の岸投手(楽天)も先頭に立って自分のやるべきことを一生懸命やっていた。
そういう姿は若い選手のいいお手本になったのではないかと思う。 ――いよいよ五輪前年。どう進めていくか。
◆今年のテーマは「創る」。新たに生み出すという意味も込めている。これまでの「学ぶ」「試す」ということは当然、継続するが、チームを五輪に向けて少しずつ創っていきたい。
――3月にメキシコとの強化試合があり、秋には国際大会「プレミア12」もある。◆日米野球に続いてもう一度、国際試合を経験してもらいたい選手もいるし、新たに経験を積んでもらいたい選手もいる。メキシコ戦は結構、若手が多くなるかなと考えている。
逆にある程度、経験がある選手たちは、プレミア12は、結果も重要になる。◆もちろん。
優勝を目指してやっていく。ある程度はプレミア12という大会が五輪への土台になっていくと思っている。一方で五輪はシーズン中に行われるので、調子やけがなどいろいろな要素が絡む。
そういう意味で、いろいろな選手に経験をしてもらいつつ、その選手がけがでメンバーから外れた場合にどの選手を入れるかという部分も含めて、試したり確立させたりすることもしっかりとやっていきたい。僕の中でも構想が少しずつできている。今年1年かけてどんどん進めていけたらと思う。
いなば・あつのり 愛知県出身。愛知・中京高(現中京大中京高)、法大を経て1995年にヤクルト入団。2005年にヤクルト入団。
首位打者1回。08年北京五輪、09、13年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表として活躍した。14年に現役引退。
17年、WBCで打撃コーチを務め、同年7月に日本代表監督に就任した。

 
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